キャリアカウンセラー 月岡美緒さん インタビュー

   

フリーランスのキャリアカウンセラー。

と聞いて、あなたならどんな人物を想像するだろうか? 起業マインドに溢れ、エネルギーはいつも満タン!
そんな人物かという私の予想は、見事に外れてしまった。

穏やかで、しかし理知的に、論理的に話を展開する。
明るい女性。営業職、心理学、プライベート、 転職、起業、手帳、未来管理、ゆるさ、
そして、ライフ。

独自の視点から繰り広げられるキャリアカウンセリングの物語を、
とくとご覧いただきたい。

キャリアカウンセリングだけで収まりたくない

―キャリアカウンセラーの仕事をしたいと思った理由をお聞かせください。

私、もともと金融関係で営業職をしていたんですね。お客様はけっこう掴めていたんですよ。トップセールスマンだったんです、一応。

ただ、お客様との関係を長続きさせるためには、どうしても相手の心理の部分や、ニーズの汲み取りなどを上手くやらない限りは、「やっぱりそれ以上にはいけないな」っていうのを痛感していたんです。

ただ闇雲に相手を知ろう知ろうと思っても、そこはやっぱり、あまりにも広すぎるし多種多様だしっていうので、うまくいかないですよね。だったら、ある程度の心理的なツールだったり傾向…相手の「こういうタイプはこうだ」とかそういったものが分かりさえすれば、その方の心理はつかみやすい。そういう風に思ったのがキッカケだったんです。

働いていたこともあり、大学院や専門学校にがっつり通うことはできなかったので、オープンキャンパスのような…その単位だけとか、そのクラスだけちょっと通って取れますよっていう専門学校で、心理学を勉強したんです。

半年から1年くらい通ったかな? 休んだ授業の振替をしたり、そんなにガチガチに行っていたわけではなかったんですけど。ただ、そこにいらして自分を担当してくださった先生が、しっかりとした臨床心理士さんで、現役の方だったんですね。

大学や専門学校でも教えていて、患者さんもとってますよっていうマルチな感じ。企業の産業カウンセラーだったかな…そういったこともされていました。オールラウンドな方だったんですね。とても話しやすくって、気持ちのいい方でした。その先生から、「あなたは臨床心理士だったり、カウンセラーで成功します」って言われたんです。

―「あなたには素質がある」と?

ええ。でも「はっ? え~ウソでしょ?」って。まさかそれを仕事にするなんて思わないし、私は一つのツールとしてしか考えてなかったので、その時はお断りしたんです。

―ツールというと営業職の武器みたいな感じでしょうか?

そうそう。そういう感じで。「臨床心理士になるんだったら、また大学院行くのか〜。大変だ」っていう思いがありましたので、「いいです」って言ったら「じゃあ今はいいよ。いろいろ働きなよ。けど、その後何かお仕事したら戻っておいでよ。キャリアカウンセリングだったり臨床心理士だったり、カウンセラー業界に」って言われて…「待ってます」と言われたのがキッカケだったんです。

だからその先生がいなかったら、まさかこういったものを仕事にするとは思わなかった。仕事にまでは。たぶん副業や趣味など、ちょっとした…ってことは出来たかもしれないけども、がっつりと「これで収入を得よう」というまでにはなれなかったと思います。だから、「人の言葉って大切だな」って思いました。

―それから実際に心理の業界にいくまでには、どのくらいの期間があったんですか?

そうですね。7年くらい経っていたと思いますね。

―心理を学んで臨床心理士や産業カウンセラーになるのは想像しやすいんですが、キャリアカウンセラーを選ばれたのは何かキッカケがあったのですか?

そうですよね。最初に思うのって臨床心理士ですよね。私もそれしか知らなかった。あとは産業カウンセラーだったんですけど…ちょうどその頃に、厚生労働省がキャリアカウンセリングを推していたんですね。

アメリカで、キャリアカウンセラーの存在によって仕事のアンマッチングが防がれている。それが大学センターや、個人カウンセリングでも功を奏してます、というモデルがあって、それを日本にも入れようっていう動きがあったんです。じゃあカウンセラー増やそうか、と。

ところが、キャリアカウンセリングはやっぱり専門的になりますので、資格を取るためにはお金がかかるわけなんです。でも教育訓練給付制度が使えたんですね。だったら今後は、産業カウンセラーよりもキャリアカウンセラーを目指そう、と。

honbun_tsukioka_01_compress

私もキャリアでものすごく悩んだりしましたし。あとは「新しい分野だけれども、アメリカで根付いたっていうことは、その10年後には絶対日本で根付くはずだ!」っていう変な自信があったので(笑)。今後はたぶん、この仕事は広がりがある。そう思ってのキャリアカウンセラーの選択だったんですね。 これが正しいか正しくないか、なんとも言えないんですけれど(笑)。

―キャリアカウンセラーの勉強を始めた頃は、すぐ会社をやめてフリーにというわけじゃなくて、どこかに所属する気持ちでいたんですか?

もちろん、最初はどこかに属したりそこの会社が提供しているものを利用してのキャリアカウンセリングという、お客さんを紹介してもらうような形ですよね。その方が効率的にはいいなと思っていたんです。けれども、そこから先っていうのは…

会社という分野にとらわれて。当時私が考えていたのは、「キャリアカウンセリングだけで収まりたくない」ということだったんです。どうしてかっていうと、キャリアとプライベートは切っても切れないから。どちらかだけが良くても、悪くてもダメなんですね。双方が上がっていかないといけない。ということは、会社に属したキャリアだけのカウンセラーっていうのは限界があると感じたんです。 ただ、ほとんどの会社はそこまでしかやってないんだろうな。プライベートのところまでは…やれていないのではないかと思いますね。

―福利厚生の一貫として産業カウンセラーさんが入っている。というイメージがありますね。そういう感じではなく、もっと密接に関わるということでしょうか?

そうですね。プライベートも全て聞いて、トータル的に関わる。たぶんそうしないと、結局満足いかないんだなっていうのが身をもって分かったんです。どんなに仕事がうまくいっていたとしても「でも…でも…でも…」って自分のマイナスを探しちゃうんですね、人は。仕事とプライベート双方が同じ分だけ上がっていかないといけない。ということは、そこまで…プライベートまでカウンセリングしないとダメだから。

そこまでをモデルにしてる会社があるんだったら、もちろんそこに就職したい気持はあったけれど…ない。「ない」ってうのが現実だったので、「だったらフリーで」っていう風に。ただ、これも批判されましたけどね。「そんなの…成功するのか?」って。

その人の変遷、歴史を全て分かってあげて、じゃあそこからどうするかを一緒に考える

私がやりたいキャリアカウンセリング、お客さんとの理想の形って?…と模索して、「キャリアカウンセラー」と名を打ちながら、途中で変遷して名乗る名前を「ライフアドバイザー」に変えたんです。関わるのは「キャリア」だけじゃないから。で、以前から「女性はプライベートが切り離せない人が多いな」と思っていたんですね。

―女性はプライベートが仕事に出て、男は仕事がプライベートに出る。と言ったりしますね。

そうですね(笑)。中には、女性でも全て「スパーン!」とやる方もいるんですけれども、プライベートが充実すると仕事もやりがいが出てくるとか…結局、切れていない人が多いんですよ。

男性の方だと、真のキャリアカウンセリングになることが多いんです。あと経営者の方も。「次の事業どうしようか?」っていう相談で。だから男性のプライベートな事は知らない場合が多いですね。でも女性の場合はプライベートも知ってる。その人の変遷、歴史を全て分かってあげて、じゃあそこからどうするか?という話になりますね。

あとは、起業前カウンセリングですね。「客観的に見てどれが成功しますか?」、「どれが向いてますか?」など、ご自身では分かりきれないので。どの部分を自分で主として行うのかも…。例えば、「営業が得意な人」だったら自分では営業を主として行う。だけど経理が苦手であれば、経理は他に流した方がいいですよね。外から人を入れるなどして。それを自分で見極めることが難しい方も多いんです。

客観性を見ることができない。だからなんでも請け負おうとして失敗する。だったら何を主として起業しようか?みたいなところもありますね。それを「いつまでにするか?」というのを、ちゃんと時間を区切って課題を出したり、足りない能力があったら短期間で取らせます。もう、お尻たたきます(笑)。そうすると、途中で勉強が嫌になってしまうので、勉強が嫌にならないようにどのようにその途中のカウンセリングをするかが肝心なんです。

―それは例えば、「褒めて伸びるタイプ」とか「言って伸びるタイプ」とかですか?

そうそう。叱咤激励とか。心理学でいう高原現象…「プラトーの法則」というものがあって、ある一定のところまでいくと誰しも飽きるんです、勉強って。そこから上に上がれないという。ではその時にどういう打破をするか?

例えば、文房具を全部一掃させちゃうんです。一掃して変えさせちゃうの。そうして新たな気持ちにリセットさせるんですね。そういうのもカウンセリングの一環でやらせます(笑)。

―カウンセリングがクライアントのためだけでなく、例えばビジネスなどご自身のヒントに繋がることもありますか?

やっぱりいろいろ調べるので。例えば節税もそうですし。「どういうところから助成金がもらえるのか?」「何々機構を使えばいいのか?」「誰の講座に出るのがいいのか?」「どんな本がいいのか?」それを、お客様の情報から私も全部読むんですね。

そうした情報を自分なりに整えて、また次のお客様の相談に活かします。だから私が理解できていないと、他のお客様にもお伝えできません。

月岡美緒

例えば会社の起業支援があったとしたら、「起業するまでのモデルケースがどんなものなのか?」というのを、自分も一緒に身をもって体験できるんです。色んな方がいるので、お店系の人、輸出入の人、とか。「セミナーを設けるのか?」「どんなルートがあるのか?」など。

そういった情報が「あ、そういうやり方があるんだ」とか、断片的なお客様の情報を集めて…一緒に動いて…という途中で知っていく。知らないことも多かったです。いろいろ(笑)。

―助成金とかは、知らないと全く触れない部分ですよね。

触れない。芸術系も、以前に文科省が助成金を出してた場合もあったんですよ。それで留学出来たりっていう。例えば演劇の勉強がしたいとか。有名なところでいくと、女優の裕木奈江さん。あの方が応募して留学されて、その後、クリント・イーストウッドの「硫黄島からの手紙」に出演されましたよね。それで皆さんも助成金のことを知るようになったみたいなんです。私も芸術系の人から聞いて。そういうのは今まで知らなかったこと。

JETRO(日本貿易振興機構)も、貿易会社を始める人のためのノウハウを教えたりとか、いろいろ開いてますよね。ただ、国って宣伝しないので誰も分からない。知らないから、一部の人しか利用してないんです。

クライアントをおめおめと火の中に放り込む真似だけはしたくない

お客様が「いいよ」と教えてくださった本は私も読んでますね。自分だけで本を読むと偏ってしまうので。だから必ず、キャリアカウンセリングのクライアントさんとは一緒に「どんな本を読もう? どうしようか?」って相談。私が知ってるオススメ本も薦めたりします。そうすると読んでくださって。で、逆もしかりなんですよね。だからもう、自分のためにもなってます。

流行から時代の予見をされている本も読みますね。外れる時もあるんだけど、しないよりはやっぱりして、できるだけリスクは回避させたいんです。

自分もそうだし、クライアントをおめおめと火の中に放り込む真似だけはしたくない。それをやってしまうと、立ち直るのに時間がかかってしまうので。「落ちるところまで落ちてしまう前にストッパーかけないと」っていう心情がありますね。イチかバチかの勝負にはあんまり出させないんです、私。ある程度の勝敗の見込み、勝率がある程度ないとゴーサインは出さないです。

―監督みたいですね(笑)。

そうそう(笑)。だから「3ヶ月で結果を出したいんです!」って言われると本当に困る。 何年後かには確実にステータスを上げさせます。というのが強みです。 本当にしっかりやるとなると、私は年単位だと思っているので。

スケジュール管理というよりは「未来管理」

―「手帳の使い方が自慢」「手帳依存症」とブログプロフィールにありますが、それは何故でしょうか? 「書く」という行為にはどんな効果がありますか?

私、手帳ってスケジュール管理と、プラスアルファ自分が「こうなりたいこと」っていうのも全部手帳に書きこむんです。 朝何時に起きてどうしたいとか、こういう生活を送りたいっていうのも全部なんです。ホームパーティを開きたいなとかね(笑)。

「見ること」。まず可視化することって、とっても大切なんですよ。目って一番入りやすいっていうふうに言われているんです。でも、iPhoneだと次から次からへと情報が入るので、自分の頭から流れてしまうんですよね。はっきり言って私はほとんど残らないな~。

あとは、いろんなことをメモしようと思った時に、起ち上げてその部分を出すまで煩わしい(笑)。手帳の方が気楽というか、即座に書き写すことができますよね。で、見ることによってそれを頭から入れて、「こういう自分になりたい」「こうなっていたい」っていうのを過去形で書きます。

「こういう風になりました」と書きこんで、その「なりました」というのを読んで視覚で入れて、「なったんだ」と意識するんですね。もうその繰り返し。そうすると、それにだんだん近づこうとして、その姿になろうとして行動が変わってくるんです。だから年中、手帳を開きたいの。

―なるほど、「私こうなりたい」じゃなくて「私こうなりました!」って完了形で書いていくんですね。

そうそう。こういう所に行きたいな。というのがあれば、もう書き込んじゃう。「ここで旅行に行こうかな」とか決めちゃう。だから手帳がツールっていう方もいるんですけれど、私は自分の心を写していると思ってます。「写しだす物」。iPhoneじゃダメなんです。

「手帳依存症」とブログプロフィールに書いたのはだいぶ前だと思います。たぶん依存していたのは、自分が本当にやりたい仕事で成功していなかったから。だから見る回数が異常に多かった。「依存」だった。でも、今はある程度見えてきてるから回数は減ったんですよ。

手帳でスケジュール管理というよりは「未来管理」をしていますね。未来だったり、「こうありたい」と思う願望の管理。どう管理して、どういう時間の使い方をして、どこで成功させるかっていうのを、手帳を通して、1日、1週間、1ヶ月と決めています。だから、自分を作るために手帳は存在するのかな?と思っているんです。

―じゃあ「見返す」というのは大事な作業なんですね。

そうですね。まず見ること。視覚的に入れることが大事です。

―「目標に期限をつけなさい」とよく言われますが、期限も明記しているんですか?

明記します。「いつまで」とか。で、見直す。 美味しい物を買ってきて見直していますね(笑)。必ず美味しいものとセットにしているんです。楽しい作業にしたいから。デパ地下の高いものとか日頃は買わないの買っちゃう!みたいに。 クライアントさんも喜んでやっていますね。

ただ、期限をつけて…それで成功しなかった時は、自分に対してダメ出しはしません。 期限に終わらなかったからと言って、ダメな子じゃない、と。 必ず予備日を設けるんです。

例えば2014年中に成功しなかったら、「2015年の◯月◯日までに」と予備日を設けるんです。そうするとみなさん、追い込まれてショックを受けてへこむ、ということはなくなります。ちょっとゆるいんです(笑)。

その方がリラックスできて結局成功するんですよ。予備日があることによって。

冠婚葬祭だったり、自分じゃどうにも出来ないこともあるじゃないですか。それによって予定が変更になることはしょうがないです。人間関係なので。そこをストイックにやるのは本末転倒です。 人間関係でビジネスは成り立っているので、人を失います。

例外を必ず認める。それが自分の中の決まり事かもしれない

―クライアントの相談内容に加え、ご自身で収集する情報も多いことと思います。 内外の様々な情報に囲まれるとストレスが溜まると思うのですが、ご自身なりの対処法はありますか?

私の対処法としては「全てがホントだと思わないこと」なんです。信じ過ぎると、そこに対するストレスって大きいんです。裏切られた時、情報も何もかも。

だから、「7割くらいは合っているけれど、3割は違うかもしれないな」という見方をするんです。そうすると、情報をたくさん入れているにもかかわらず心理的に楽になるので、情報に躍らされることはないんです。

私は、「どれも正しいと思っていて、どれもウソだと思ってる」というスタンスなんです。「あ、こういうこともあるんだな〜」って流す。「なるほどな」って流す。焦ったり、信じ過ぎていて一直線になっている方っていうのは、 遊び心がないので周りから敬遠されてる場合もあるんですよ。

―例えば、夜寝る前に自分をニュートラルに戻す儀式みたいなのをしていますか?

よく言われるんですけど、逆に決めないんです。飲み誘われたら飲み行きます。誘われなければ家でのんびりしてます。自分と向きあう時間がたまたま持てたら向き合います。気楽だから(笑)。

決めると「決めたこと」がプレッシャーになるので、日課にはしないんです。例えば、◯時に起きると決まっていたとしても、例外を必ず認める。それが自分の中の決まり事かもしれないですね。

例外はあっていいんです。どうしてかっていうと、ルールがあるからこそ例外はあるので。そこを寛容に認められれば、人との付き合いを急に断ったり、ストイックにならずに済みます。 他人が寄ってきます。

結局、完璧な人間って、人は敬遠するんですね。だからあえて隙を作った方がいいんですよ、何でも。で、やる時はやる、みたいな(笑)。

もちろん仕事では手を抜かないですよ。 でもそれ以外のことっていうのは、ある程度ゆるくというか、 「他人に流されてもいいや。でも、自分をしっかり持つ時もあっていいや」ぐらいな感じにしとくんです。

人は変化するものなので。他人の昨日言っていることと今日言っていることが変わったとしても、それはいいんです。きっと、その時とその後で何か学ぶことがあって変わったんだから、みたいな感じで(笑)。

資格と経験は掛け算

―企業からの求人内容や求職者の動向の変遷を、間近で感じるお仕事だと思います。時代の変化の中で「仕事」「生き方」に迷う人へのアドバイスはありますか?

私がよく、20代の方のキャリアカウンセリングをしていて「あれ〜?」って思ってしまうのが、資格をやたら取ろうとするんですよ。資格、資格って…、「今でもまだそれなんだな〜」って。やっぱり変わってないんだって驚いたんです。

「この資格をとってこの業界にいく」っていうのを、まだ言ってる人達がいるんだなって。私はちょっと「あれ?」って思いましたね。

無いよりもあった方がもちろんいいと思います。例えば会社の条件で「簿記2級を持っている方」とかありますよね。そうすると、2級を持っていればもちろん受ける資格はありますよね。でも、経験ありきじゃないですか?

「資格さえ持ってれば」ってすごく狭い視野で見てる方がまだ多いなって思いました。そういう方によく話すのが、「資格と経験は掛け算」です。何ですか? ってよく訊かれるんですけど。資格を持っているとします。レベル1の資格。でも掛け算ってことは、経験が0なら合計は0なんです。

例えば、レベル4の資格を持っているとします。経験が0ならやっぱり0。でも、レベル4の資格と経験が2あったら…ちゃんと8になりますよね。どちらかが0だとどこまで行っても0なの。「足し算ではないんです」っていうのをよくお話ししているんです。

とくに私は中途採用を見る場合が多いので、転職だと経験を求められるんです。 20代の時の経験でどういうことをしてればいいのか、30代の時はどういうことをしてればいいのかって、多少は決まっているんですね。

例えば30代だと、求められるのはマネジメントスキルなんです。「部下をどれだけ育てているの?」「後輩の面倒をどのくらい見れるの?」って。そうなると、自分の仕事がいっぱい出来て能力があったとしても、それだけじゃダメです。

やっぱり、その世代世代で経験は積んでもらいたいなと思います。そうしたらやっぱり、「簿記2級の資格をとったから経理ができます」は違いますよね。

「簿記2級を取得しました。そしてこういう経験をしてきました。それが経理に生かせると思います」って言ってほしいんです。だから経験ってすごく大切。「今していることが、どういう風に次の仕事に生きるかをしっかり考えてください」と伝えています。

グレーゾーンが大切です

あと、迷っている方にけっこう多いのが「30才までにどうにかしよう」とか、期限を決めていらっしゃる方が意外にいるんですね。「30才までに転職しなきゃ」「30才までにどうにかしなきゃ」「30才までに…」って30才神話が(笑)。

それもですね、私は「35才ゴール」「40才ゴール」と出させるんです。 30才でどうにか出来なかった時の話を。あとは…完璧を求めて就活しないことです。

すごい完璧に「資格もあるし、いろんなこともやったし、これだけのものを身につけて出来るようになった。よし!自分だったら市場価値があります」という方がいたとしますよね。でも、求めてくれる人がいなければ結局ダメなので。だったら「7割でもいいからまずは挑戦してみよう」と言って、完璧でなくても7割出来ていて迷っている人は動かします。でも0の人は動かしません。

例えば、「TOEICが400点レベルでビジネス経験はありません。留学経験もありません。でも英語をこれから上達させたい」と言って、英語業界に飛び込もうとする方がたまにいるんですが「いやいや無理でしょ」と。そういう方は必死で止めます。

自分の実力が7割までいって動く準備ができたら、あとは世間の様子を見ながら動きましょうねって言っています。完璧はあまり良くないですよ(笑)。

完璧を求めすぎると、心がおかしくなる人が多いですね。0か100しかない人って。だから「グレーゾーンが大切です」ってよく言います(笑)。 白でも黒でもないことってあるんですよ、世の中には。いいんです、グレーで(笑)。

何才になってもビジネスできるという最高齢モデル

―今までの人生の中で、感動した経験をお聞かせください。

クライアントさんで、軽井沢のお店から「ジャムを売りませんか?」と声をかけられた女性がいるんです。一度もビジネスをしたことはないんだけれど、手作りのジャムを「お店に置きませんか?」って声をかけられて…もうそれって立派なビジネスですよね?

それを「これから始めよう」という70代の方のアシストをするのは…私はもう感動したというか興味深いというか 。すごく印象に残っていますね。

たまたまお友達に連れられて来たんです。「友達もすすめるし、そういうの受けたことないから面白そうだな」、「人に話を聞いてもらう機会ってあんまり無いですから」って。

月岡美緒

ご主人も亡くなられて、でもまだ人生終わるわけじゃない、「何か始めようか」っていうので。 でも最初は全然やる気なかったんですよ。今後のことだったりとか、普通のご相談だったんです。

そこからジャムの話があって「え、そんな技術持ってるんだ」って話になったんですよ。それで、「じつは声をかけられてて…」と言うので「どう返事してるの?」と聞き返したら「う〜ん、なんか自分一人じゃできな〜い」って言うんです(笑)。

だけれども、いろいろお話すると「いざとなったら相談出来る人がいるんだ」って思ってくださって、そうなると自分から切り込めるんですよ。「なにかあったらまた相談しにいけばいいや」ってなりますよね。でも、意外にご自分でしっかりやってます(笑)。
もう面白いって言うか感動しましたね、やっぱり。 何才になってもビジネスできるという最高齢モデルだと思いました。 「軽井沢でジャム」っていうのがいいでしょ?

仕事をするってことは生活やいろんなことに結びついている

―ご自身、もしくは取り組んでるキャリアカウンセリングを短い言葉で表すと何になるでしょうか?

私、キャリアカウンセリングって「ライフ」だな〜って思っているんですね。「L・I・F・E」のライフ。キャリアカウンセリングって言いながらも…やっぱりキャリアだけじゃないんだな〜って。

人って、食べることが満たされるとか、住居が満たされるとか、命の心配がないとか、奪われたり殺される心配がないとか、そういう欲求がしっかり満たされると、ちゃんと仕事をすることにいくんですよね。

―マズローの定理だったでしょうか?

それです! ビジネスって上に位置しているんだけど、その下には必ず生活がある。そこの根本が整っていないと、ビジネスって崩れるなと思っているの。

―住むところがあって、食べる物があって、すると仕事もやりたくなってくる?

他人に対することに目が向くので、ビジネスのヒントが得られるんですね。だから、全部生活なんだろうな〜って。仕事をするってことは生活やいろんなことに結びついているから、「キャリア」だけを取り出すのがあんまり好きじゃないんです。

そうなると私は「ライフアドバイザー」なんですね。

キャリアカウンセラー 月岡美緒 プロフィール

キャリアカウンセラー月岡美緒
キャリアカウンセラー。
ワークライフバランスを取りながら毎日の生活の向上をめざすバランリード(バランスとリードの造語)を主宰。
じつは雑誌で紹介されたことがある占い師の顔も。西洋占星術・四柱推命・タロット、風水などを用いての開運アドバイスなどが可能。

月岡美緒(つきおかみお)
ブログ<http://ameblo.jp/tukiokamio/>

 -interview

  関連記事

イベント主催者平賀南央美

イベント主催者 平賀南央美さん インタビュー

アート、セラピー、食など様々なジャンルが交わる、 大人の感性が出会う場所「sense meeting!」の主催者である平賀南央美さん。 感性にまかせて自分の惹かれるも...

バナナの人鍋元ミハイル

バナナの人 鍋元ミハイルさん インタビュー

何かをするときのコンセプトは、 目に見えない思想や考えでなければ相手に伝わらないということはない。 もっと、自由だ。 それが新たなものを生み出していく。 彼にとっ...

currybar新居宏文

CURRY BAR 店主 新居宏文さん インタビュー

メニュー表に、各地の温泉が掲載されている店を、私は他に知らない。 東京。降り立ってもランドマークがない、曙橋。 とあるビルの地下に、その店がある。 階段を降...

ガラスアクセサリー作家小島恵理

ガラスアクセサリー作家 小島恵理さん インタビュー

陽の光を受けて、虹色にきらめくとんぼ玉たち。 ガラスアクセサリー作家のアトリエ「FrostMoonBriller」(フロストムーンブリエ)は彩りに溢れている。 イベント会場で...

メイクセラピスト塩月美香子

メイクセラピスト 塩月美香子さん インタビュー

自分の外見を変えてみたい。 それは女性なら誰しもが描く想いかもしれない。 メイクセラピー、パーソナルカラー、ポジティブ心理学… 塩月美香子さんは多彩な分野を修め、外面か...

  • インタビューへ
  • スタッフブログへ
  • ニュースへ
  • 丁度いい温かさ 塩月美香子さんインタビューへ 鍋元ミハイルさんインタビューへ 小島恵理さんインタビューへ
  • ローフードマイスター森田寿昌恵さんインタビューへ 企画プロデューサー豊陽子 企画プロデューサー豊陽子演出家加藤真紀子 キャリアカウンセラー
  • 写真家 スパイス
currybar新居宏文
CURRY BAR 店主 新居宏文さん インタビュー

メニュー表に、各地の温泉が掲載されている店を、私は他に知らない。 東京。降り立ってもランドマー

メイクセラピスト塩月美香子
塩月美香子さんの「ちょぴてつノート」

このサイトでインタビューさせていただいたこともある、メイクセラピストの塩月美香子さん。 ずいぶ

日比遊一
写真家 日比遊一さん インタビュー

ただ単純に、そう見せたいんです ―「地の塩」の作品を拝見して、自分が体験したわけでもなく、知ら

お酒と肝臓の話
ストレス発散にはお酒!という男性に最適の講座

ストレス、お酒、男性がキーワード 当サイトでインタビューさせていただいた、平賀なお美さん。 記

ハマトラ
ハマステ第2弾「ハマトラ THE STAGE DOUBLE MISSION」見てきました!

© カフェノーウェア/ハマトラ製作委員会 © HAMATORA STAGE PROJECT Ⅱ